毎日お届けしていた国際通貨基金(IMF)2020年年次総会特別ニュースレターも今日で最終号です。今週は重要な1週間でした。「世界経済見通し(WEO)」「国際金融安定性報告書(GFSR)」「財政モニター」の最新版が公開されました。また、世界経済の未来、復興と強靭性、気候変動対策、ロックダウン下での生活、コロナ時代の学習などについてハイレベルのイベントがたくさん開催されました。
今日のニュースレターをご確認いただく前に1点、お伝えさせてください。年次総会にあわせて毎日お送りしていた本ニュースレターもこれで最終号となりましたので、本ニュースレターに関して、また今回のバーチャル形式での年次総会について一般的に、皆さんの感想をお伺いできると嬉しいです。本ニュースレターに掲載していた情報は皆さんの役に立ったでしょうか?どの号が一番良かったですか?2021年春季会合のニュースレターでは、どのような内容を増やす(減らす)のが良いでしょうか?皆さんからのご連絡を心待ちにしております。直接、Eメールでご連絡ください。どんな感想でも構いません。
ブレトンウッズの時、再び
「今、私たちはブレトンウッズの時を再び迎えている。パンデミックによって、すでに100万人以上の命が失われている。これは経済的な大惨事であり、世界経済は今年マイナス4.4%の成長となり、来年までに世界GDPから11兆ドルもが失われる試算となっている。そして、大規模な混乱の中で苦しんでいる人々については必ずしも語られていない。また、数十年にわたり解消が進んできた貧困が再び拡大している」と年次総会本会議での演説でクリスタリナ・ゲオルギエバ専務理事は語りました。
「私が世界経済にとっての『長い登り道』と呼んでいる道のりが私たちの目前に控えている。困難で、ばらつきが大きく、不確実で、そして幾度かの後退もありそうな登り坂だ。けれども、これは上へと進む道である。そして、私たちは今も続く問題の一部、つまり、低迷する生産性、大きな格差、迫りくる気候危機に対処する機会も得るだろう。パンデミック前の世界を築きなおす以上に優れたことが私たちには可能だ。未来を見据えて、より強靭で、持続可能性が高く、あらゆる人々のためになる包摂的な世界を構築することができる」とも専務理事は述べています。演説全文はこちらからご確認ください。
2020年10月「世界経済見通し(WEO)」
IMFによる最新の「世界経済見通し(WEO)」は、2020年が深刻な景気後退になると引き続き予想しています。世界の成長はマイナス4.4%の予想で、6月のWEO改訂見通しからは0.8%ポイント上方修正しました。この修正の理由ですが、第2四半期の結果が予想を幾分上回ったこと、そして第3四半期には一部の新興市場国・発展途上国での下方修正によって相殺された部分があるものの、全体としてより強力な回復の兆候が見られたことに由来します。2021年の成長率は5.2%に回復する予想で、これは6月時点の予想よりも0.2%ポイント低いものです。
記者会見でIMFのギータ・ゴピナート調査局長は「医療的解決策がベースライン予想よりも迅速かつ広範囲に提供されれば、2025年末までの世界の累積所得は約9兆ドル増加し、あらゆる国で所得が増え、所得格差も縮小する可能性がある」と述べました。ゴピナート調査局長のブログ記事全文と記者会見(英語)の模様を是非ご確認ください。
2020年10月「国際金融安定性報告書(GFSR)」
最新版「国際金融安定性報告書」では、金融環境の大幅な改善によって経済への信用の流れが維持されている一方で、経済見通しをめぐる不確実性が依然として大きいことがわかっています。例えば、(最近価格調整が見られるものの)株価が上昇している金融市場と、経済活動が低迷し見通しが不透明なこととの間には引き続き乖離が見られます。こうしたギャップは、景気が速やかに回復すれば徐々に解消する可能性があります。しかし、例えばウイルスの制御により多くの時間がかかりうるなどの理由で景気回復が遅れれば、投資家の楽観は後退するかもしれません。IMF金融顧問兼金融資本市場局長のトビアス・エイドリアンによるブログ記事全文をこちらからご確認ください。記者会見(英語)の模様もご覧いただけます。また、この報告書に関する新しいポッドキャスト(19分間、英語)もお聴きいただけます。
2020年10月「財政モニター」
2020年10月の「財政モニター」が公表されました。各国が今般の危機対応にあたった経験を分析して、人命を救い、景気後退の影響を軽減し、成長や雇用創出を復活させるためにパンデミックの諸段階で政府に何ができるのかを考察しています。
「経済が回復するにつれて、各国政府はこの機を逃さず危機以前の成長モデルと決別し、低炭素のデジタルエコノミーへの移行を加速させるべきだ。 カーボンプライシングがこの移行の鍵となるだろう。人々がエネルギー消費を削減し、よりクリーンな代替エネルギーへと移行することを奨励するからだ。さらにカーボンプライシングは、その一部を最も弱い立場の人々への支援に使える税収も生み出す」と最新ブログ記事でIMFのヴィトール・ガスパール財政局長、パウロ・メダス、ジョン・ラリエ、エリフ・ツレは述べています。また、この報告書に関する新しいポッドキャスト(17分間、英語)もお聴きいただけます。
IMF財政局のガスパール局長およびキャシー・パティロ局長補、パオロ・マウロ副局長が記者会見のスピーカーを務めました。IMFコミュニケーション局のコミュニケーションオフィサーであるティン・イェンが司会です。会見の模様はこちらからご確認ください。
新型コロナと世界経済
世界経済は戦後最大のショックを受けました。政府は人命を救い、生活を守るために異例の措置を対策として講じました。トンネルの出口はもう見えているでしょうか?CNBC司会者のジェフ・カットモアが司会を務める本テレビ討論会にはクリスタリナ・ゲオルギエバIMF専務理事、クリスティーヌ・ラガルド欧州中央銀行総裁、インドネシアのスリ・ムルヤニ・インドラワティ財務大臣、Gaviワクチンアライアンス理事会議長でアフリカ連合新型コロナ対策担当特使のンゴジ・オコンジョ・イウェアラ氏が参加しました。関連資料も確認されたいですか?私たちがお勧めする資料の一覧(英語PDF)をご参照ください。またイベント映像(英語)はこちらからご確認いただけます。
別のイベントとして、クリスタリナ・ゲオルギエバ専務理事とメリンダ・ゲイツ氏がCNN司会者ベッキー・アンダーソン氏の司会によって活発なビデオ対話(英語)を行いました。この会話で2人は、検査であれ、治療法やワクチンであれ、パンデミック克服にどう投資と国際協力が必要となるか話しました。このイベントの関連資料をご確認されたいですか?こちらをクリックして、私たちがお勧めする資料(英語PDF)をご参照ください。
また、欧州中央銀行のクリスティーヌ・ラガルド総裁とIMF欧州局長のアルフレッド・カマーがパンデミック後の状況について、欧州の政策担当者にとっての課題について対話を行いました。ラガルド総裁は「パンデミックに対処し、3種類の政策に重点を置くことで復興を支えるべきだ。そうした政策は、健全な規制環境、民間投資を奨励するかたちでの対象を絞った公共投資、教育・職業研修である」と述べました。また、市民が今後の変化を推進していくことになる点、また、政府が環境保護と気候変動を最優先事項として掲げることをユーロ圏人口の75%が期待している点にも言及しました。
さらには、ブルームバーグテレビジョン(ロンドン)の司会者フランシーヌ・ラクア氏の司会により、復興と強靭性に関して熱い議論が行われました。是非、お時間をつくってご確認ください。この議論に参加したクリスタリナ・ゲオルギエバ専務理事は「医療制度の改善、景気刺激策の縮小を時期尚早に行わないこと、刺激策の歳出は経済変革のために使うことという優先事項3点に政府が注力する必要がある」と述べました。COP26担当英首相金融顧問兼国連気候行動・金融担当特使のマーク・カーニー氏も本イベントに参加し、「気候変動が民間部門、金融部門、実質経済の注目を集めている」と話しました。
ブラックロック社のローレンス・フィンク会長兼CEOは「社会のデジタル化が進むにつれて、炭化水素の必要性は減少する。また、世界のどの家庭もデジタルを活用できるようにすべきだ。そうすることで、生活の質が上がり、人生も良くなる」と発言しました。アンゴラのベラ・デーブス・デ・ソーサ財務大臣は自身の今後12か月の戦略について話し、「生き残れるようにするため、人命を救えるようにするために、医療制度が崩壊しないように、また債務が持続可能であるようにすべきだ」と言及しました。こうした話題について資料を確認されたいですか?こちらをクリックして、私たちがお勧めする資料の一覧(英語PDF)をご参照ください。また、イベント映像(英語)もご確認いただけます。
コロナ時代の学習
新型コロナ危機によって格差が露呈かつ深刻化しており、児童・生徒、保護者、教師に大きな負荷がかかっています。また、何百万人もの子どもが学校を退学しています。こうしたストレスに伴い、児童・生徒の世代全体に消えない傷跡が残されてしまう可能性があります。カーンアカデミーの創設者でCEOのサル・カーン氏を迎えて、児童・生徒や教育制度にとっての課題、遠隔学習の価値と制約、社会に生じる長期的な影響についてサビナ・バーティアIMF秘書局副局長と対話を行いました。ニュー・エコノミー・フォーラム「コロナ時代における学習」を映像(英語)でご確認ください。
復興、気候、テクノロジーなどについてのアナリティカル・コーナー
今週、何日間にもわたりアナリティカル・コーナーが設けられました。1回目は公平な復興の実現に焦点をあて、新型コロナ危機下での政府の企業支援や、中東・中央アジアにおける包摂的な成長のための社会支出などについて議論が行われました。2回目には、気候変動とシナリオ計画についてのセッションが設けられ、サブサハラアフリカにおけるグリーンな回復やIMFにおける政策ゲーミングについてプレゼンテーションが行われました。3回目には新しい世界におけるテクノロジーを取り上げるセッションが行われ、サブサハラアフリカにおけるデジタル化と新型コロナ対策、新型コロナ危機下での技術導入と経済耐性、モバイルマネーが紹介されました。
4点目のアナリティカル・コーナーは「変化する社会」をテーマとして、移民の経済的影響、欧州における自動化と雇用、ラテンアメリカにおける感染拡大防止策を取り上げています。5点目のアナリティカル・コーナーは、ロックダウン下での生活に焦点をあてたもので、パンデミックからのアジアの教訓、ドイツの短時間労働制度、「大封鎖」が広くもたらした世界経済への影響を議論しています。
「総裁との対話」 モロッコ、アンゴラ、インドネシア
「総裁との対話」シリーズの一環として、モロッコのモハメッド・ベンシャブーン経済・財政大臣がIMFのジハド・アズール中東中央アジア局長とモロッコの新型コロナ対策について討論を行いました。また、アンゴラ財務大臣のベラ・デーブス・デ・ソーサ氏とインドネシア銀行のペリー・ワルジヨ総裁との対談が行われました。デ・ソーサ大臣は財政再建と慎重な公共財政について、ワルジョ総裁は新型コロナ危機下での政策ミックスについて話しました。
能力開発トーク:債務、ガバナンス、腐敗
新型コロナウイルスのパンデミックが低所得国における債務水準の上昇に拍車をかけている中で、債務脆弱性を管理し財政リスクを軽減する各国の能力を強化するために進められている取り組みに光を当てた能力開発トークを開催しました。IMF能力開発局のロジャー・ノードおよびオアナ・クロイトル、金融資本市場局のペーター・ブロイヤー、統計局のクレメント・チュティ、戦略政策審査局のマルコス・チャモン、財政局のアマンダ・サイヤがスピーカーを務めました。
別の能力開発トークでは、サブサハラアフリカにおける新型コロナ融資支援の活用に関して、良い統治(グッド・ガバナンス)を推進し、汚職など腐敗のリスクを最小化できるよう支援する上でのIMFの役割について様々なパネリストが議論しました。また、ウルグアイのアズセナ・アルビレッチェ経済財務大臣が「総裁との対話」に登場し、IMFのアレハンドロ・ウェルナー西半球局長との対話を行いました。その他の能力開発トークやイベントについてはこちらをご参照ください。
来週の予定
「クロスボーダー決済の将来ビジョン」 モデレーター:クリスタリナ・ゲオルギエバ(IMF専務理事)、スピーカー:アーメッド・アブドゥルカリーム・アルコリーフィ(サウジアラビア通貨庁総裁)、アグスティン・カルステンス(国際決済銀行総支配人)、ジェローム・パウエル(連邦準備制度理事会議長)、ノル・シャムシアー・ユヌス(マレーシア中央銀行総裁)
また、来週には中東・中央アジア、欧州、アジア太平洋、サブサハラアフリカ、西半球の「地域経済見通し」の公開が控えています。他にもイベントが予定されています。ライブ配信の全体スケジュールをご確認ください。ライブリンクを更新しています。
これからの情報の集め方
年次総会特別ニュースレターは今日で最終号を迎えましたが、来週金曜日に各地域の「地域経済見通し」や他の重要イベントを要約したメールをお送りします。それまでの間、イベント予定やブログ記事などについて最新情報を知りたい方がいらっしゃいましたら、こちらをクリックしてご自身のEメールをご入力の上、IMFニュースレターの全一覧をご確認ください。
敬具
IMF2020年年次総会チーム